特別な日はあなたに。
今日はみく姉のバースデイ。
私は、いつも以上に着替えに手間を取らせていた。
「るか姉ーっ、みく姉のプレゼント何買うか決めた?」
笑顔で私の元へ駆け寄ってくるりん。
りんは、大のお姉さんっ子で他の誰よりもみく姉が好き。
今日はりんにとっても特別な日らしく、いつも着ないようなワンピースを着ていて、財布片手に私を待っていた。
「ん、ごめん。もうちょっと、待っててくれる?」
私はほっぺを膨らませるりんを待たせて、部屋で着る服に悩んでいた。
すると、ふいに目に入ったひとつの箱。
キレイにラッピングされていて、私は中身を確認することさえ惜しくなって、今までずっと大切に取っておいた。
--------そう、それは...いつか、みく姉が私のバースデイにくれたプレゼント。
私はそっと、そのプレゼントの端に触れた。
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プレゼントが入っている箱に、キレイに絡みついているリボンをゆっくりと引きほどいていく。
「るか姉ーっ、まだ〜?」
全てのリボンをほどき、箱を開けた瞬間。
扉の向こうから、りんの声が聞こえた。
私は返事をすることも忘れ、その箱の中身に入っていたピンク色のセーター生地のワンピースを眺めていた。
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----ガチャッ
「あっ、るか姉おそいよっ!」
私が部屋から出ると、相変わらずほっぺを膨らませていたりんが、腕を組んで立っていた。
りんが腕を組むと、着ている可愛いワンピースもさすがに負けてしまう。
プレゼントを選んでいると、早速りんはお目当ての品を見つけたようで、そそくさと私を置いて行ってしまった。
私はというと、特に宛もなくその辺の雑貨を見ていた。
--すると、近くにあったネックレスに、私は一瞬気を取られた。
どうしてもそのネックレスが気になって、私は早歩きで近づいてエメラルドグリーン色のネックレスを手に取った。
「....この色、みく姉みたい..」
ボソッと呟くと、ネックレスがそれに応えるように光の反射でキラキラと光った。
その瞬間、私はネックレスを両手で取り、レジへと足を運んだ。
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『みく姉、誕生日おめでとうっ』
夕方、みんなが食卓に集まってみく姉のバースデイを祝う。
みんな、誰の誕生日よりも服に気合をいれている。
きっと........いや、絶対みんなみく姉が大好きなんだ、とこの時自覚する。
みんながプレゼントを渡す中、私はなぜか気後れしてなかなか渡せずにいた。
そして、みんなが渡していくにつれ、みんなのプレゼントのセンスに自分のプレゼントへの自信がなくなってしまった。
そのどのプレゼントをも、笑顔で受け取るみく姉。
私のプレゼント、喜んでくれるかな。
みんなのときみたいに、笑顔を見せてくれるかな。
私は両手に抱えたプレゼントに、ギュッと力をこめていた。
手に汗が滲む。
「るかちゃん?」
気づくと、みく姉が首を傾げて私の方を見ていた。
私は口をパクパクさせて、プレゼントをみく姉の前に突き出した。
いきなりの行動で、周りの人達は目を丸くしていた。
「えっ......くれるの?」
みく姉の言葉に私が頷くと、『ありがとう』と、淡い緑色の目を細めて口元を緩ませていた。
私は、みく姉の反応を見るべく、じっとただ静かに眺めていた。
みく姉が細長い水色の箱を手にとって、そっとピンク色のテープを剥がした。
箱のふたをゆっくりと開けるみく姉が、やけに焦れったかったけど...
開けたことを確認すると、心臓がバクバク鳴り出した。
例のネックレスを両手で掴んで、みく姉は日差しに照らしていた。
日の光に当たって、私がお店で見たのよりも、キラキラと光り輝いていた。
ただ、みく姉は何も言わなかった。
黙っていて...でも何か言いたげな表情で、目を細めてネックレスを見ていた。
「.....きに、いらなかった?」
私が思わず言葉をこぼすと、みく姉はハッとした顔で、私の方へ向き直った。
「あっ、ご、ごめんね!つい....見とれちゃって.....」
その言葉に私は、最初ポカンと口を開けていた。
見とれちゃって....?
そう考えていると、みく姉はネックレスを自分の首にかけて、しばらく首元を見てから、私の方を向いた。
「.......似合う?」
その時微笑んだ柔らかな笑みに、私も思わずつられて微笑んでしまった。
「....似合う」
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こうしてみく姉のバースデイパーティは長いようで、短く終わった。
みく姉はみんなに一言ずつお礼を言って、部屋に帰していた。
りんやGUMIは、『だいすき』とかなんとか言って、みく姉に抱きついていた。
私もしたいとか、思ったり.....なんて、私が抱きついたらそれこそ大問題。
キャラ的にきっと、あり得ないからそれはよしておく。
みく姉は、私が部屋に戻ろうとするとふいに、私の服の裾に手を伸ばした。
「るかちゃんっ、その服着てくれたんだねっ♪」
いきなりの言葉に、私は掴まれたピンク色のセーターのワンピースを見た。
「いつ着てくれるかなって、思ってた...けど、ありがとう!」
そう言っていたみく姉の目には、なんだか目が滲んでいるように見えた。
「みく姉......」
私はそっとピンク色のハンカチを出して、みく姉の頬に添えた。
今の私にはこれくらいしかできない、けど......その涙が流れた時、何か私にかけてあげられる言葉があるのなら........それまで、待っててね...みく姉------
私はただただ微笑んで、みく姉がその涙の意味を言う時を、ただただ待っていた。
--------外はもう暗くて
時計の針が丁度 重なった瞬間
......みく姉は涙を拭って
そっと 笑った。
Today...2013/1/5...End